「その思い込み、もう手放していい」~心を解放する実践ステップ~

これまでの記事では、「小さな出来事でもトラウマは生じること」、そして「その体験が無意識の思い込み(ビリーフ)として人生に影響を与えること」をお伝えしました。

では、その思い込みを手放すにはどうすればいいのでしょうか?
今回の記事では、実際にカウンセリングやセルフケアの場で用いられる“心のほどき方”を、丁寧にお伝えします。

ステップ①:「気づく」~無意識のビリーフに光を当てる

最初の一歩は、自分の中にどんな“前提”があるのかに気づくことです。

こんなふうに問いかけてみましょう

◦ 「なぜ、私はいつも人の顔色をうかがってしまうのだろう?」

◦ 「なぜ、大事な場面でいつも緊張してしまうのだろう?」

◦ 「なぜ、他人の評価がこんなに気になるのだろう?」

そしてその奥にある声を聴いてみます。

 「嫌われたくない」
 「傷つきたくない」
 「見捨てられたくない」

そう感じている自分に、やさしく「そう思ってたんだね」と声をかけてあげてください。

ステップ②:「過去と今を分ける」~“あのとき”の反応を手放す準備

心の反応が強いとき、私たちは“今”を生きながら、“過去”のモードで動いてしまっています。

たとえば、上司の叱責に怯えてしまうのは、子どもの頃に親から怒られた記憶と無意識に重なっているからかもしれません。

そこで大切なのは、

あのときの私」と「今の私」は違う

という事実に気づくこと。

大人になった今のあなたには、「選択肢」も「知識」も「サポート」もあります。

「あのとき、守れなかった自分を、今の私が守ってあげよう」
そんなふうに、自分の味方になる感覚を持ってみてください。

ステップ③:「ビリーフを書き換える」~新しい“心のスクリプト”をつくる

ここで登場するのが、ビリーフチェンジセラピーなどで使われる「書き換え」のプロセスです。

たとえば、こんな風に進めます

1,古いビリーフ(思い込み)を言語化する
 例:「私はダメな人間だ」「私は愛されない」

2,そのビリーフができた“原体験”を振り返る
 例:幼い頃に失敗して先生に怒られた、両親に否定された経験など

3,今の視点から、その出来事を見直す
 「あれは、私が悪かったわけじゃない」
 「あの人がそう言ったのは、その人の問題だったかもしれない」

4,新しいビリーフを自分に届ける
 例:「私は十分に価値がある」「私は愛されていい存在」

このプロセスを何度か繰り返すことで、心にしみついた“古い思い込み”が、少しずつゆるみ、変化していきます。

ステップ④:「体感する」~感情とつながり、安心を育てる

思い込みを変えるときには、頭でわかるだけでなく、体で感じることがとても大切です。

◦ 深呼吸して安心を感じる

◦ 自分の胸に手を当て「大丈夫だよ」と語りかける

◦ 信頼できる人に気持ちを聴いてもらう

そうした“感覚レベルの安心”が、心の中の緊張をほどき、思い込みの変化をやさしく支えてくれます。

まとめ:「変われる」ことを、信じていい

トラウマ的な思い込みは、長年心を守ってきた“古い約束”のようなものです。
でも、もうその約束を守らなくてもいいと気づいたとき、

あなたの心は、自由に、のびのびと、自分らしく生きる準備を始めます。

焦らなくて大丈夫。
すこしずつ、すこしずつ、自分を癒しながら歩んでいきましょう。