~ミッドライフクライシスとうつとの関係について~
「このままでいいのだろうか?」
「自分の人生、これでよかったのだろうか」
40代、50代と迎え、
仕事も家庭もひと段落し落ち着いてきたはずなのに、
なぜか、心の奥に虚しさや焦りを感じるという思いに、
とらわれることはありませんか?
こんにちは、心理カウンセラーの飯田です。
今回は、人生の折り返し地点に立ったとき、
誰もが一度は直面するかもしれない「心の揺らぎ」について考えてみたいと思います。
こうした感情というものは、
「ミッドライフクライシス(中高年の危機)」と呼ばれる変化の一つです。
そして、この時期には、うつ症状が重なることがよく観察されています。
ミッドライフクライシスとはなに?
ミッドライフクライシスとは、
人生の折り返し地点である、
おおよそ40代から50代頃にさしかかったときに訪れ、
内面的な葛藤や不安のことをさします。
それまで歩んできた人生を振り返るなかで、
「自分の人生はこれでよかったのだろうか」
「もっと、夢を追うべきだったのではないか」
「本当にこの選択でよかったのだろうか」
「今の自分には何も残っていない気がする」
というような思いや後悔が強まり、
将来に対する夢や希望が持てなくなる。
まるで、心が霧に包まれたような状態になります。
私のカウセリングへ来られる方の中にも、
「これといって、特別大きな問題があるわけではありませんが、
この先、自分が何を目指して生きていけばいいのかわからないんです」
と語られる方も少なくありません。
実際、しっかりされている方や人に頼られる人ほど、
自分の不安や迷いを誰にも話せず、
ひとりで葛藤を抱えているケースが多いです。

なぜ、この時期になるとうつになりやすいのか?
ミッドライフクライシスの時期に、
うつ症状が表れやすくなるのには、いくつかの理由があります。
中高年の時期というのは、人生の中でもとくに「変化」が多い時期です。
しかもそれらは、ひとつひとつが心に重くのしかかるものばかりです。
たとえば、
- キャリアの終盤や定年退職への不安がある
これまで仕事中心で頑張ってきた方ほど、
「あと何年働けるんだろう」
「自分の役割はこの先、どうなるんだろう」
と将来への漠然とした不安を抱えやすくなります。 - こどもの独立、親の介護、パートナーとの距離感
家族の在り方が大きく変わり始める時期です。
子どもが巣立ち、親の介護が始まり、
夫婦間にも、これまでは違った関係性が求められるようになります。 - 健康問題や老い実感
からだのあちらこちらに不調が出てきたり、
思うように動けなくなってきたりすることで、
「もう自分は若くない」という現実を突きつけられることが増えてきます。 - 過去の選択への後悔や未練
「あのとき別の道を選んでいれば」
「本当はやりたいことがあったのに」
そんな後悔が心をよぎりやすくなるのも、この年代の特徴です。
こうしたさまざまな出来事が、一度に、あるいは立て続けにやってくると、
心がそれに追いつかず、気持ちの整理がつかなくなってしまいます。
結果として、
「何をしても気持ちが晴れない」
「以前は楽しめていたことにも興味や関心が持てない」
「朝起きるのがつらい」
といった、うつの初期症状がじわじわとあらわれてくるのです。
特に注意が必要なのは、
普段からしっかり者と周囲に思われている方や
家庭でも職場でも、頼られる立場である人ほど、
「自分は大丈夫」「弱音は吐けない」と無意識に心を押し殺してしまい、
気づいたときには、かなり深刻となり疲弊していることもあります。
うつというのは、決して「心が弱い人」がなるものではないです。
むしろ、一生懸命に努力し頑張ってきた人ほど、なりやすいです。
だからこそ、
「これくらいで弱音を吐いちゃいけない」
「自分より大変な人はたくさんいる」
と自分をせめるようなことはしないでください。
この時期の心の揺らぎは、誰にでも起こる自然なことであり、
だからこそ、はやめに気づいて、声に出していくことがとても大切なのです。
現場で見てきた声
私は長年、精神領域の現場で看護師として多くの中高年の方と接してきました。
そして今、心理カウンセラーとして同じように人生の折り返し地点で立ち止まり、
悩まれている方々の声を聴いています。
ある50代の男性は、このように語ってくれました。
「仕事もマイホームも手に入れて、何の不足もないはずだったのに、
ふと自分はこの人生でよかったのだろうかと思って涙が出てきたんです」
ある50代の女性は、
「時間はあって自由なはずなのに、ぽっかり穴が空いたかのような、
この先なにを生きがいにしていけばよいかわからなくなっています」
こうした「ぽっかり空」は、誰にでも起こり得るものです。
そして、うつ症状の入り口として始まることもあります。
人生の見直しのチャンス
ミッドライフクライシスという言葉を聞くと、
なんとなく「危機」「迷い」というネガティブな印象を持たれるかもしれません。
たしかに、心が揺れて、人生の先が見えなくなる時期ではあります。
けれども、この時期を「ただの危機」と捉えてるよりは、
自分の人生を見直すための転機なのではないかと考えています。
40代、50代という人生の折り返し地点で、
私たちは自然と、これまでの道のりを振り返るようになります。
若いころの夢はどうだったんだろうか。
あのときの選択は正しかったんだろうか。
本当にこのまま歳を重ねていって、後悔しないだろうか。
そんな自問自答がふと心に浮かぶようになるのです。
でも、これはけして悪いことではありません。
むしろ、ここから先の人生をよりよく生きるために必要な、
大切なプロセスだと私は思います。
ひとりで抱え込まないでください
もし、あなたが今、
人生の折り返し地点で、
心が折れそうだったり、なにもかもがむなしく感じる、
と思っているなら、それは弱さではありません。
それは、心からのサインです。
だから、その声にどうか気づいてあげてください。
最後に
私自身も、人生の中で何度も立ち止まり、
悩み、迷い、そして回復してきた一人になります。
だからこそ、今、同じように苦しまれている方の気持ちが痛いほどわかります。
ミッドライフクライシスとうつ状態は決して特別なことではありません。
誰にでも起こり得ることで、
そこからの回復には、「人とのつながりと対話」が大きな力となります。
心が折れたとき、立ち止まっても大丈夫です。
そのとき、自分の声を聴くチャンスです。
あなたのこれからの人生を、より自分らしく生き直すためのサポートを、
私は全力でお手伝いしたいと思っています。

もし今、心が疲れていたり、
ひとりで抱えるのがつらいと感じているなら、
どうか無理をせず、気軽にご相談ください。
あなたのペースでお話しいただけるよう、
カウンセリングで丁寧にお話を伺っています。