不安とどう付き合えばいいのか──全般性不安障害のあなたへ

こんにちは。
心理カウンセラーの飯田です。

私は長年、精神科の看護師として働いてきました。
現在は心理カウンセラーとして、不安や緊張で生きづらさを感じている方のサポートをしています。

今回は、「全般性不安障害(GAD)」と呼ばれる状態について、
そして、不安との付き合い方について、私なりの視点でお話ししてみたいと思います。

「理由はないけど、ずっと不安」そんな毎日ありませんか?

全般性不安障害の特徴は、「根拠がないのに不安が続く」ことです。

たとえば、

◦ 特にトラブルがあるわけでもないのに、何か悪いことが起こりそうで落ち着かない

◦ 家族が出かけただけで、「事故に遭うんじゃないか」と心配になる

◦ 将来のことを考えると、いても立ってもいられない

◦ 夜になると、心配が頭をぐるぐるめぐって眠れなくなる

◦ いつも何か「準備が足りない気がする」「このままじゃだめな気がする」

こんな風に、“不安が背景にずっとある状態”が続くと、心も体もとても疲れてしまいます。

私がこれまで関わってきた方々の中にも、
「もう何十年もこんな感じで生きてきた」とおっしゃる方がたくさんいました。

不安を「なくす」ことにこだわりすぎないでください

不安がつらいとき、人はどうしても、
「早くこの不安を消したい」「なかったことにしたい」と思ってしまいます。

そう思うのは、あなただけではありません。
私も含め、多くの方が、そうやって何とかやり過ごしてきました。

でも実は、不安という感情は「悪者」ではありません。
それは、心があなたを守ろうとして発しているサインなのです。

たとえば、

◦ 「何か起こるかもしれない」

◦ 「失敗したらどうしよう」

◦ 「人に迷惑をかけてはいけない」

こういった心の声の奥には、
「ちゃんと生きたい」
「誰かをがっかりさせたくない」
「大切な人を守りたい」
そんな、まっすぐな気持ちや誠実さが詰まっているのです。

ただ、それでもやっぱり、
「そんなこと言われても、今この不安がつらい」
「どうしても不安の波にのまれてしまう」
という方も多いと思います。

その気持ちも、よくわかります。
長く看護の現場で、そして今はカウンセラーとして、不安に押しつぶされそうな方々と関わってきました。

「不安を見つめましょう」なんて、簡単に言えることではありません。

不安なときの身体の反応は本当にリアルで、
動悸、呼吸の浅さ、吐き気、めまい、頭の中がぐるぐる止まらない……

理屈ではなく、体ごと“こわさ”にのまれてしまう感覚なのです。

だから私は、このように伝えしています。
「不安を消そうとしなくていい。
すぐに落ち着こうとしなくていい。
ただ、“今、不安なんだな”と、そっと気づくだけで十分です」

呼吸が浅くなっていたら、「ああ、体ががんばってるんだな」と思ってあげてください。
心臓がドキドキしていたら、「それほど怖かったんだね」と、まるで子どもに声をかけるように、
心の中で自分に寄り添ってあげてほしいのです。

最初は上手にできなくて当然です。
でも、こうした「寄り添いの習慣」を少しずつ続けていくことで、
不安との距離感が変わってきます。

日常でできる、不安との付き合い方

ここからは、
私が実際のカウンセリングや看護の現場でお伝えしている、実践的な方法をご紹介します。

① 「今ここ」に戻る呼吸

不安なとき、意識は未来や最悪のシナリオに向かっています。
そんなときは、3回だけゆっくり呼吸をしてみてください。

◦ 鼻から吸って、4秒数える

◦ 少し止めて(2秒ほど)

◦ 口からゆっくり、6秒以上かけて吐く

「吸う・止める・吐く」に意識を向けるだけで、思考が少し静かになってきます。

② 不安に名前をつけてみる

「また来たな、不安さん」と、少し距離をとってみましょう。

「心配くん」「大丈夫かなおばけ」など、自分なりの呼び名でOKです。

不安と“べったりくっついた状態”から、一歩離れることができます。

③ 「ほんとうは、なにが怖いの?」と自分に聞いてみる

不安を感じたら、「何が起きそうで怖いの?」「それが起きたらどうなるの?」と、静かに自分に問いかけてみます。

すると、「責められるのが怖い」「見捨てられるのが嫌」「失敗したくない」など、
その奥にある心の本音が見えてくることがあります。

この“気づき”が、心の中にスペースをつくってくれます。

「思い込み(ビリーフ)」が不安を強くしていることもあります

全般性不安障害の方とお話ししていると、
その人の中にある「強い思い込み(ビリーフ)」が不安を深めていることがよくあります。

たとえば、

◦ 「ちゃんとしていないと、見捨てられる」

◦ 「人に迷惑をかける自分はダメ」

◦ 「不安を感じるのは弱い証拠」

◦ 「安心していたら何か悪いことが起こる」

こういった無意識のビリーフは、
子どもの頃の家庭環境や過去のつらい経験からつくられていることが多いです。

私のカウンセリングでは、そうした「心の前提」をやさしく見つめ直し、
「安心していい」「弱くても人に受け入れてもらえる」といった、新しいメッセージに書き換えていくプロセスを大切にしています。

最後に──心は、少しずつ変わっていける

不安と向き合うことは、簡単ではありません。
でも、丁寧に向き合っていけば、
少しずつ「安心できる自分」を取り戻していくことができます。

不安を感じるあなたは、弱いのではありません。
むしろ、心がとても敏感で、人のことを思いやれる、やさしい力を持っている人です。

だからこそ、
今度はそのやさしさを、自分自身に向けてみてほしいのです。

「今日1日、不安があっても、私はちゃんと生きていた」
「どんな自分でも、ここにいていい」

そんな風に、自分に語りかけてあげてくださいね。

必要なときは、私もそばにいます。

心理カウンセラー
飯田恒幸